国産針葉樹を使用した家具の制作・販売
納品・施工事例
ライダーズハウス 様
新潟県上越市直江津地区
M氏邸・古民家町家(築110~120年)改装記録
2019/10~2021/2(16ヶ月間)
協同組合ウッドワーク
新潟県上越市直江津駅近くの町家です。何度も改装されていますが、構造自体はそのままです。解体時に見つかった、三度目の改装のときの壁の下張りの新聞紙が昭和2年の日付でしたので、おそらく大正時代か、明治末期に建てられたものだと思います。昔を知る方のお話では、かつては旅館を営んでおり、親鸞上人の旧跡をめぐる巡礼旅行者などが宿泊し、宿の方が現地を案内していたそうです。雪国ですので、雁木(木製のアーケード)が特徴です。
数年前までは花屋さんでした。
最初の解体で天井を落とした状態です。百年分の非常に粒子の細かな(黒い龍角散みたいな)ホコリが数センチ積もっていて、家全体のホコリの清掃や、土壁の解体、丁寧な解体が必要な部分など、解体・清掃で、約一ヶ月かかりました。構造材はどれも標準的なもので、農村の古民家とは違って質素なつくりです。構造は歪んでいて、垂直も水平もなく、床のレベルは部屋の真ん中で10センチも下がっていました。また、構造が危うい場所も多く、梁の補強や柱の増設、金物補強など「これ以上壊れないための」補強工事が必要で、これにも相当な日数がかかりました。
このような町家は周囲の家と壁一枚でくっついた状態で、数軒の家が互いに支えているという状態です。地域の方はこのような状態を「総持ち」といいます。ですから中の一軒を取り壊してしまうと隣接家が傾いてしまします。その意味でも、新たな用途で町家を使い続けることが大切です。
二階の床板を取った状態です。黒い龍角散みたいなホコリが見えます。全部剥がして清掃してから、ようやく造作工事になります。
漏水がひどく、屋根の板金をふき直すまでは、室内に「雨ドイ」を仮設して流すほどでした。また、雨漏りのバケツも10個ほどあちこちに配置しました。かつての屋根の上に、さらに屋根を載せた改造がされていて、もはやどこから雨が漏れるのかまったくわかりませんでした。
床も壁も歪んでいて、新たに水平な床と垂直な壁を新設しなくてはなりませんでした。
床の高低差は10センチもあり、微妙なレベル調整が必要になり、パッキンによる調整はを百箇所以上になりました。このようにして床の下地を組み、断熱材を入れて合板を貼ります。
町家ですので、隣家とはくっついていて、なんと屋根裏では隣の家の部屋の天井につながっていました。防火と防音のために、新たに屋根裏に壁を新設しなくてはなりませんでした。
また、床を水平にするために10センチ以上、床が上がったので、梁を出さないと天井が低くなってしまうので、既存の梁や屋根形状にわせて天井を作るのが大変でした。
とにかく、至るところ「水平」「垂直」づくりに終始します。また、二階には大きく長い資材の搬入経路がなく、床に穴を開け搬入口を作りました。この穴は、最後の最後まで塞げませんでした。
なんとかボードを貼りました。壁に出ている梁に合わせてボードを貼るのが大変です。
床材を貼り、腰板を貼り、見切り部分を先に塗装した状態です。
壁や天井は、漆喰のような風合いにしたいので、塗装にしました。パテによる下地処理が大変ですが、やはりビニールクロスではまったく風合いがでないので、塗装屋さんに頑張っていただきました。仕上げた部分はすべてビニールでマスキングします。このあとパテ部分をサンドペーパーで「みがく」からです。大変な量の「粉」がでます。しかし「みがき」の良し悪しですべてが決まってしましますので、ここが一番大事。
塗装が仕上がりました!
ちなみに、この部屋の木の部分は植物性のオイルで仕上げています。
床材は杉で、腰は松です。
部屋A(2F)が出来上がりました!
天井の梁が出ているのはデザインではなく、しかたなく、なのですが、格好よくなりました!
障子の組子には、ステンドグラスの「赤色ガラス」を組み込みました。昭和レトロな感じで。
ドアは無垢の木製で、鏡板は一枚ものの杉です(樹齢150年くらい)
塗装はオイルステインのウレタン塗装。あえて艶ありの「びかびか」の仕上げにしました。
ドアの組子にもステンドスラスを入れました。ドアノブは輸入品の真鍮製です。
部屋A(2F)の障子部分です。障子組子のステンドグラスがよくわかります。
部屋A(2F) 建具の腰板の150年モノの杉の木目がよくわかります。
この板は平らではなく、ブラシをかけ木目が浮き出るようにしてあります。
部屋A(2F)。いちばん広い部屋です。約13畳
部屋B(2F)。窓のない部屋なので、明るく白木の仕上げです。約7.5畳
部屋B(2F)の、ドアの中に窓があるドアです。
ドアの向こうの「外光」を取り入れるため。
階段ホール(2階部分)です。昭和レトロの小さな木造ホテルをイメージしました。
これから塗装工事に入ります。
階段ホール(2階部分)出来上がりました!びかびかの塗装です。
階段ホール(2階) 漆喰風塗装にびかびかの目部塗装です。
階段ホールと階段。階段踏み板だけ既存使用。レトロなびかびかの木部塗装です。
この町家は、実はかつては別々だった2建の家を「くっつけて」あります。
この共用廊下部分は、かつては「外」でした。ですので、かつての屋根がそのまま残っています。かつての屋根の上に、さらに大きな屋根を作ったのです。
この、もとは「外」だった風合いを生かして、路地裏のような共用廊下にしました。上の写真の土壁や、下の写真のひさし部分がかつて「外」だった名残です。
2階・共用廊下出来上がりました。
かつての直江津の路地をイメージした共用スペース。(2階)
古い建具を利用してLED電灯を仕込みました。路地の二階部分も再現。
窓の向こうに部屋はありません。大きな照明器具みたいなものです。
2階共用スペースから、部屋C(和室) 部屋D(屋根裏付きの部屋)の入り口を見たところ。
部屋C(和室)です。四畳半のコンパクトな部屋ですが、品よく仕上がりました。
壁は珪藻土です。床の間の板は100年くらいの杉板です。一輪挿しの煤竹は古民家で150年いぶされていた竹です。もともと窓の無い部屋でしたが、通風と排煙のために開けました。(これはかなり苦労)
2階 部屋D 5.5畳 屋根裏付きの部屋です。二段はしごでロフトへいけます。
この部屋も窓が無かったので作りました。隣家と接近していることや、改装で外壁トタンが3重になっていること、火事が怖いので火花が出る機械を使えないこと。間柱の補強からやり直さなくてはないことなど、それはそれは大変でした。(ただ小さな窓をつくるだけなのに)
1階の台所・事務室・トイレ手洗い2箇所・風呂などのスペースの下地づくり。
2軒をつないだ家なので、途中から床も天井も食い違っていて、どうしようかと思いました。
また下水配管の点検口がやたら多く、床のピット開口部が4箇所も必要でした。
また既存柱は全部傾いているので、その柱を板材で巻いて垂直にしなければなりまsんでした。
1階 台所部分 昭和レトロの「びかびか仕上げ」です。
シンクはあったものを利用し、建具と金物をすべて付け替えました。
台所の床。びかびか仕上げ! | 台所から階段室へ びかびか仕上げ! |
シンクの扉 一枚物の無垢材です。 真鍮鏡面磨きのツマミ(特注) |
無垢ドアと飾り柱 |
1階 台所スペース出来ました!
1階の洗面ブース(2箇所あります・トイレも二箇所)
洗面什器は特注・床・ドア・腰壁はすべて無垢材のクリア仕上げ(びかびか)です。
トイレドアの組子ステンドグラス | トイレは2箇所あります |
1階 台所から脱衣場へ 床も壁もすべて能登ヒバの無垢材です |
風呂 天井と壁は能登ヒバの無垢材 建具はヒノキ 浴槽はヒノキ |
すごくいい香りがします。
ガレージ部分 床のコンクリートは花屋さん当時のままです。
天井はダークグレーの塗装 壁は杉の無垢材貼り。
照明は配線ダクトにLEDスポットライト。駐車したバイクなどがかっこよく見えます。
ガレージから 入り口部分を見る。
町家雁木の風情に合わせて縦格子のつくりです。格子はウチソト両面で、内側の格子は横にスライド出来、すきまを広げたり狭めたり出来ます。(上の写真は開いた状態・下の写真はせばめた状態) 入り口扉は両引きの吊り戸です。150年の杉の無垢板でオイル仕上げです。170センチ程度開くので、大型バイクでも楽に入ります。天井はダークグレーの塗装 壁は杉の無垢材貼り。照明は配線ダクトにLEDスポットライト 駐車したバイクなどがっこよく見えます。
外観・雁木部分工事
足場を建てるところが無いので、2階部分に「手作り足場」を作って作業しました。
出来上がりました!
自己主張せず、時間がたってもそれなりの味が出るようにしました。
お隣の居酒屋「八重菊」さんとも、連続性のある雁木に仕上がりました!
最後に、夜の様子をご案内します。
昭和レトロな建具もご紹介しています。